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割ったらびっくり!富貴鶏

杭州の逸品、開いて富貴鶏となる

杭州の誇る蒸し焼き料理

 まだまだ中国には面白い料理が沢山ありますよ。今回は世にも名高い鶏料理のお話。舞台は西湖を中心に景色の美しいことで知られる浙江省杭州です。
 「食在広州(食は広州に在り)」に対して「食在杭州」と言い切って憚らない美食の故郷です。東坡肉(トンポーロー)や緑茶の名品・龍井(ロンジン)、茶葉料理の回で登場した「龍井蝦仁」もここで生まれました。
 さて、この富貴鶏、中国では「叫化鶏(ジャオホワジイ)」、中国語で「叫化子(ジャオホワズ)」は乞食のことなので、「乞食鶏」となります。ちなみに英語のメニューでは「Beggar's Chicken」、中華料理の世界では「乞食鶏」で知られています。

匂いも薫る泥タマゴ

 この叫化鶏に初めて出会った人は、ワゴンの上に鎮座する大きな泥の塊に絶句するでしょう。
 「何んだ、こりゃ…」
 息を呑む暇もなく、一気呵成、木槌が泥の殻を叩き割ると白い湯気が立ち昇り、蓮の葉に包まれた1羽の鶏が出てきます。蓮の香りを開き、肉をさばくと八角の匂いが広がって
 「わああ!」、
 私の胃袋はこの中国臭さに黙っていられません。
 「はやく!」
 ぽってりとした鶏のおなか、中国の漬け物やシイタケ、豚肉やら香辛料がぎっしりと詰められています。ジューシーで柔らかな鶏肉とともに口に運ぶと、滋味の全てが私の舌を走って廻ります。
 「うっまー…あい」
 泥の中、天火の熱で何時間も炙られて、閉じ込められていた味覚の爆発。中華・蒸し焼き鶏料理の大胆不敵な技法です。
 尚、日本では泥の殻を主に小麦粉で作りますが、中国本土では、まだまだ泥で作っています。

昔むかし…の哀しくて美味しい話♪

 遠き世の暗くても面白い二つの物語があるそうな…。

 昔もむかし、遠い昔の杭州に、ひとり放浪する者がおりました。この者、捕まえた1羽の鶏を紐で縛り肩からぶら下げ、西湖のほとりをトボトボと歩いておりました。
 おなかは「鶏が食べたい」と思い、黙ってはいられません。そこで、この鶏で何か料理を作ろうとしますが、鍋も包丁もありません。「どうした…もんかの、」仕方なく近くに生えていた蓮の葉っぱで鶏を丸めて、泥でベタベタ塗り固め、焚き火の中に放り込んでおきました。
 我慢に我慢を重ね、もう我慢できない腹ぺこさんは、炎の中から焼けた泥の塊を拾って、道端に落ちていた石ころで割っかいて食べたら、これが実に旨かった。「うまいがな!えりゃー、うまいがな」など、涙が止まらなかった、という話です。

 昔もむかし、遠い昔のまた昔、浙江省のある村で、ひとりの者が鶏を盗んだら、追いかけてきたので必死に山へ逃げました。
 日が暮れてきて追手が迫ったとき、慌てて地面を掘って泥の中に鶏を埋めました。近くの藪に隠れていると、誰かが鶏を隠した土の上で焚き火を始めました。それは追手でした。「早く帰れよ!」、腹ぺこさんはおなかが鳴るのをじっと堪えました。
 とっぷり日は暮れ、夜も遅くなり追手は村へ帰ると、腹ぺこさんは鶏を掘り出してかぶりつき、目から涙を流しながら大きな声で「どえりゃ、うっみゃーで」と叫んだ、とかいう話でした。

乞食鶏、転じて今は「富貴鶏」となった

 いずれにしても私は、ふたりの食欲と努力に、ありがとうと言います。今では杭州人が世界に誇る自慢の鶏料理ですからね。天国にいる遠い昔の杭州の腹ぺこさんたち、あなた方の食べた鶏の料理は、今や中国でも日本でも「富貴鶏(フォックェィジィ)」とも呼ばれ、縁起の良いりっぱなごちそうになりましたよ。
 忘れないでください、このごちそう、富貴鶏を幸福な日に食べるときは「幸せのルール」があります。木槌には晴れがましく紅白のリボンを。メイン・ディッシュ、富貴鶏の泥の殻を叩いて割るのは、祝宴の主役のお役目です。ゴン!ボロッ…。食卓には歓声が響きます。
 如意吉祥(万事上手くいく)、喜臨門(福がすぐそこまで来ている)、年年高(年々良くなっていく)。さあ!福来る中国料理をたらふく食べて、心も体も景気よく前進しましょうね!
(2005/02/09)

佐野由美子(さの・ゆみこ)
 レストランプロデューサー、中国料理研究家。
広東名菜「赤坂璃宮」をはじめ各地の中国料理店の顧問などを務める。中国茶講師としても活躍。中国の食文化の普及に貢献したとして平成15年度社会文化功労賞を受賞。
 代表取締役を務めるカメリアエンタープライズは、ホテルなどのレセプションや食にまつわるイベントの企画、コーディネート、運営などをサポートしている。




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