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横浜中華街――共存共栄、皆でおいしく幸せに

夜更けの中華街

深夜の関帝廟

 今、横浜の中華街が驚くほど元気だ。みなとみらい線の開通で渋谷からあっという間の35分で眩いばかりの異国の街に辿り着く。極彩色の門「牌楼(ぱいろう)」を一歩くぐればそこから先は空気も変わる。昼も夜も、大通りも路地裏も、嬉々とした老若男女の人波が途絶える日がない。いったいここまで人々を吸い寄せる中華街の魅力は何だろう。

 中華街にはもうひとつの顔がある。

 夜も10時を過ぎればさすがの観光客の波は去り、さっきまでの喧騒が嘘のようにほとんどの店のシャッターが閉じる。そこから始まるこの街の姿が私は一番好きだ。路地を入ればまだ赤い看板の消えていない小さな料理店がいくつか見つかるはず。

 「ねぎそば下さい」
 「あいよっ! いらっしゃい」

 店の中にはその日の仕事を終えた近所の商店の旦那さんやおかみさんたちがサンダル履きで、小さな子供を抱っこしたりして談笑している。奥の円卓では、コックさんやエプロン姿のまかないのお姉さんたちが腕まくりで大皿に山盛りの五目焼きそばなどを黙々と食べている。店に客が残っていようがいまいがお構いなし。いつ見ても中国の人の食べっぷりは気持ちいい。

 奥の厨房からは聞き慣れたゴォーッという炎の唸りと、カンカンカンというおたまが鍋とぶつかる音。このような家族や親類縁者だけで切り盛りしている店には制服なんてないし、割り箸をテーブルにタテに置こうがヨコに置こうがお構いなし。万事がおおらか。気にしない気にしない。喫煙だっておとがめなしだ。壁には1年中おめでたい赤い札がべたべた貼られていて、紹興酒を頼めばもちろん杯はコップ。深夜の中華料理店は客にまったく気兼ねをさせない。「ずっと昔からこのスタイルでやってきたからね」。顔なじみの店主は笑っている。

「南京町」のころから

 横浜で生まれ育った私が子どもの頃、親に連れていかれた中華街は、なんだかもっとギラギラと怖い印象だったな……。

 横浜の開港(1859年)と同時にこの地に住み始めた中国人が徐々に増え続け「中華街」としてのかたちができたのは明治3年(1870年)頃と言われる。日清戦争や関東大震災で大打撃を受けながらも、1950年代からは船乗りたちで賑わう港町の盛り場になっていった。

 1972年の日中国交正常化後に押し寄せた「中国ブーム」と「グルメブーム」。90年代バブル期を迎え中華街は空前の大フィーバー。あっという間に鉄筋ビルの大型店が建ち並び、通りは全国各地からの観光客で溢れた。

 今ではこの500メートル四方の街に300軒もの店がぎっしりと肩を寄せ合っている。うち約200軒が料理店。この街のお年よりは「ぜんぶ、兄弟店なんだ」と誇らしげだ。バブル期を経て町並みの外観はだいぶ変わったけれど、時代の波に流されずにいる中国人の共存共栄のエネルギーは、今も尚、この街の魅力の源だ。日本有数の繁華街でありながら「日本で一番安全で健全な街」と彼らが胸を張るのも、日本中の繁華街や商店街が失っていった「共存共栄の精神」のなせるわざに違いない。

中華街だからやってこられた

 「むかしと変わっていないですね。本場の作り方を守っているのですか?」とある老舗の中華菓子屋のご主人に尋ねたら苦笑された。「いま、中国や香港でこんな仕事をしている店はありません。ほとんどの店が流行を追って新しいデザートを出している。ウチみたいな昔ながらの中華菓子だけの店が続けていられるのは、変わらぬことを大切にしてくれる横浜の中華街だからです」

 たしかに。朱色の円卓に赤いビニール椅子の古色蒼然とした店で、牛肉飯(ニューローハン)やワンタンメンをかきこむ幸せも然りだなぁ。ライトアップされた深夜の関帝廟の美しさに見とれながらそう思った。中華街を守り続けた商売繁盛の神様の見事な姿に合掌。
(2004/7/27)

佐野由美子(さの・ゆみこ)
 レストランプロデューサー、中国料理研究家。
広東名菜「赤坂璃宮」をはじめ各地の中国料理店の顧問などを務める。中国茶講師としても活躍。中国の食文化の普及に貢献したとして平成15年度社会文化功労賞を受賞。
 代表取締役を務めるカメリアエンタープライズは、ホテルなどのレセプションや食にまつわるイベントの企画、コーディネート、運営などをサポートしている。






東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル5F

営業時間
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電話 03-3569-2882
交通 銀座線・日比谷線「銀座駅」A2出口より徒歩3分
定休日 年中無休
 新しく銀座の交詢ビルにオープンした赤坂璃宮。限りなく本場広州に近い、素材の旨味を生かした広東料理にこだわる。
スッポンのスープや煮込みなど、早めの予約が必要とのこと。可能な限り食材を手配して応えるという。


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